【 腱板損傷 (けんばんそんしょう)・腱板断裂 (けんばんだんれつ) 】
- 損傷:そこない傷つけること。
- 断裂:断ち裂かれること。
概要
腱板が、傷ついたり(損傷)、切れたり(断裂)した状態です。
腱板とは、肩関節周りの筋肉で、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・大円筋・小円筋が合わさった筋群の総称です。
肩の関節を覆って、捻る動きに関係し、関節を安定させるように働いています。
腱板損傷・断裂とは、腱板のいずれかの筋肉が、
傷ついている(損傷)、
部分的に切れている(不全断裂)、
全部切れている状態(完全断裂、全層断裂)です。
主な症状は、肩の痛み、夜間痛です。
損傷や断裂の程度が同じでも、痛みの出方やどのように動かすと痛みが出やすいかは、ある程度傾向はありますが、個人差が非常に大きいため、症状の特徴だけでは、五十肩と見分けがつきにくいです。
腱板損傷・断裂に対して、特定の姿勢で、特定の負荷をかけることで原因部位を見分ける徒手検査もあるはあるのですが、腱板が痛みの元かどうかはわかっても、損傷か断裂か、炎症が強く起こっているだけなのか、などは見分けられないこともあり、予測はついても、確定的ではありません。
病院にかかり、MRIを撮ってはじめて確定できる病状です。
最も多い腱板断裂は、棘上筋の断裂で、腱板断裂というと棘上筋の断裂を指すことが圧倒的に多いです。
皮膚が傷つくのと同様、
身体の中の筋肉が傷ついたり、切れたりしているので、
人によっては、困ってしまうほど痛みが強かったり、
夜寝ている時に痛みで目が覚めてしまったり、痛みで寝られなかったりしますが、
中には、損傷や断裂があっても、痛みがでていない方もおられます。
肩関節の動きに影響が出る方もおられますし、なんら影響を感じない方もおられます。
気づかないうちに腱板損傷・腱板断裂となっている方も多くおられます。
断裂の症状の強さは、小断裂より広範囲断裂の方が強くなると言われていますが、傾向として言われているだけで、実際には、個人差が大きいと思います。
男性の方が多いですが、男性女性どちらも起こり、
若い人にも起こりますが、40歳以降、特に60歳以降に多く、日本で600万人ほど、
人口の5%ほど、100人に5人ほど、おられると言われています。
原因としては、強い力がかかった時に起こったり、腱板自体が弱ってく日常的に肩を使っている中で自然と起こる場合もあります。
負担によって、損傷や断裂は進行することがあります。
自然経過で切れた腱板がくっつくことはほとんどありません。
自然経過、もしくは治療により、診断された方の内、70%の方は症状が改善すると言われています。
病状は、程度や部位により、損傷、不全断裂、完全(全層)断裂と分類され、
更に、
断裂は、深さで、関節面断裂、滑液包断裂、層間断裂、に分類され、
完全(全層)断裂は、小断裂(1cm未満)、中断裂(1-3cm)、大断裂(3-5cm)、広範囲断裂(5cmより大)、に分類されます。
病院で行われる一般的な治療の概要
病状と主治医の方針により様々あると思いますが、
基本は、腱板が切れていること自体が問題なのか、その痛みが問題なのか、を見極めて治療が行われることが多いと思います。
軽度の場合は、先ずは保存療法 ( 薬やリハビリなど手術をしない治療 ) が行われ、
痛み止めの薬などで症状を軽くして辛さを抑え、
適度なリハビリ(運動療法など)で負荷に負けない状況を作り、
悪化しないように、治りやすいように、症状を緩和し、身体を強くするような、
自然治癒を補強する形で治療を行い様子をみることが多いようです。
病状が軽度で、腱板の損傷や断裂が悪影響をしていなければ、症状をおさめることが治療の目的になります。
腱板が断裂していても、悪化しないように気をつけながらいれば、症状がおさまれば、問題なく生活できるからです。
しかし、保存療法が効かない、もしくは、重症の場合、手術療法が薦められることになります。
また、ご本人が希望された場合も、病状と手術の効果を再検討してから手術をする場合もあるようです。
保存療法
痛み止め の 飲み薬や貼り薬
痛みを緩和するために処方されます。
ブロック注射
麻酔薬、副腎皮質ステロイド、ヒアルロン酸を状況に応じて使い分けて、必要に応じて使用されます。
症状が強い場合、麻酔薬と副腎皮質ステロイドを注射して痛みを抑えたり、
症状が軽く、肩の負担を減らす必要がある時にはヒアルロン酸を注射して、肩関節の動きを良くして負担を減らし、症状や病状が改善することを期待します。
リハビリと同じく、病状の根本的な治療ではなく、症状を改善することが目的の治療です。
リハビリテーション(運動療法・徒手療法)
断裂がくっつくための根本的な治療ではなく、
断裂部の負担を減らすために、周りの筋肉を強くし、肩の動きを良くするリハビリを行い、病状の悪化を食い止め、症状の改善をはかります。
動かし方によっては断裂部を広げるような負担がかかることがあり、運動時も日常生活も注意が必要になりますので、医師や理学療法士の指示をよくご確認ください。
リハビリの効果の如何によっては、手術をするかどうかの判断材料の一つにもなります。
腱板断裂の診断がついていて、マッサージ、接骨院、整体、鍼灸など、病院以外で施術を受ける際には、
腱板断裂の診断を受けている旨をきちんと伝えてください。
より的確な施術を受けるためと、動かしすぎて悪化させるリスクを減らすために重要です。
手術療法
断裂したところを、物理的にくっつけます。
病状は、腱板が切れてしまっていることなので、その腱板を元のようにつなぐため、病状としては原因に対する治療といえます。
腱板の状態が、くっつけにくい状態の場合、人工関節を用いた手術が検討されます。
手術をすると、途切れていた筋肉がつながり、動かしにくかった肩関節が動かし易くなり、
筋肉がちぎれそうになる時の痛みがおさまり、楽になってきます。
ただ、手術前から腱板自体が弱っている場合は、術後しばらくしてまた切れてしまうリスクがあり、
切れた腱板をくっつける手術でも、人工関節を使用した手術でも、
手術後、肩の動かし方を制限しなければいけないこともあります。
手術を勧められた際、
今の状態が、日常生活でどれだけつらく、差し障りがあるのか、
手術をした場合、何が良くなり、何が制限されるのか、
術後のリスクによって日常生活はどのように変わるのか、など、
主治医によくご相談され、ご自身の生活状況と、ご意向に合った選択となりますよう、納得の上されることが重要なことと思います。
その決意は、術後の生活やリハビリのなかで、あなたの支えの一つになってくれるからです。
治療に対する私の考え
腱板断裂・腱板損傷の治療は、病状や治療の効果の個人差が非常に大きいため、ご自身のご意向が最も大切になってくると考えております。
治療をするのか、しないのか。
どこまで治療に取り組むのか。
手術を薦められて、今の程度なら様子を見る、今の程度なら手術をしてほしい、
というようなご判断をしなければいけない場面があるからです。
また、痛みが強い、もしくは、頑固な場合、治療には時間がかかることがあります。
手術をするしないに関わらず、
場合によっては、半年~年単位での継続が必要となることもあり、
すぐに良くならず、少しずつの変化の場合、
その治療に打ち込んで続けられるかどうか、どこまで続けるのか、
本当にこの治療で良いのかなどの不安や悩みがある時など、
ご自身のご意向と根気強い意思、治療を継続するかどうかのご判断が必要になります。
現在どの程度の痛みで、どの程度差し障りがあり、どの程度の痛みならなんとかやっていけそうか、
をご確認し治療に臨まれると良いように思います。
症状が軽い場合は、
何をすると断裂が広がるような負担になるか、や、
痛みを悪化させる動きとさせない動き、を気をつけてコツを掴んで生活をされれば、
特に治療をしなくても良い場合もあると思っています。
ただし、病院で、今後悪化する可能性があると言われていたり、何か治療をするべき状況がある場合は、
医師からの治療の提案をよく検討し、ご自身に合った治療をしてください。
症状がきつく、生活に支障がある場合は、まずは症状を和らげることを優先されるのが良いように思います。
ただ、何かしらの治療を行なって症状が和らいでも、治療を行なった時や短期間だけの効果で、
なかなか痛みが改善したといえない状況の場合は、手術も検討するのも一つの手立てだと思います。
この場合、手術をしたからといって、しっかり良くなるわけではない要素が含まれるため、
判断されるのに悩まれる方も多いと思います。
私は医師ではなく、肩の手術に関しては、方々で得る情報からお伝えするしかありませんが、
手術をして再発しないかと言われるとそうではなく、
腱板が切れてしまう状況を考えると、傷んでいる筋肉を繋ぎ直す、
例えば、使い古したロープを繋ぎ直すような状況とも考えられ、
また切れてしまうリスクは拭えないようです。
人工関節の場合は、痛みなどの症状は減ると思われますが、動きに制限がかかってしまう部分もあります。
手術により、痛みは減ると思いますが、場合によっては残ることもあるようです。
ですので、手術は、これらを理解した上で、
今のつらい状況を脱するんだ!手術後もしっかり良くするために頑張るんだ!
というお気持ちが大切になってくると思っています。
客観的にリスクと効果の情報を並べて考えると、状況によって判断の時期は違うと思いますが、
私は、手術は最終手段の一つだと思いっています。
弊院の鍼灸施術で得られること
病院以外の治療として、鍼灸は効果的なのでしょうか。
一般的な鍼灸の効果を考えると、
保存療法のように、痛みを和らげ、筋肉や関節の動きを良くし、患部にかかる負担を減らす効果と、
患部の血流が良くなり、直そうとする働きを補助してくれる効果があると思います。
ですので、病院での保存療法の方向性と合致しており、保存療法的な効果が期待できると考えます。
弊院の鍼灸施術は、それらに加え、病院の保存療法の基盤でもある自然治癒が、
滞りなく発揮されるように影響しますので、
断裂部が馴染み易くなり、一般的な鍼灸の効果よりも早めにおさまりやすく、
より身体に即した効果を期待できると考えています。
ただし、病状によっては、効果がわかりにくかったり、数ヶ月単位で時間がかかったりすることもあります。
私の鍼灸施術含め、鍼灸施術全般で、腱板断裂の部分がくっついたとお伺いしたことはまだありません。
私が施術させて頂いた方のご報告は、
後日、別途、施術報告の記事でご紹介しますので、
ご参考までに、よろしければご覧頂ければ幸いです。
下記の、参考、にあげさせて頂いた、歌島大輔医師の説明が、治療や日常のことをお考えになる材料として、非常にわかり易く、私も理解を深めることができました。
よければご一読されますことをお薦めいたします。
できるだけ後悔なさらず、してよかった!、と治療に臨んで頂けますよう、私の知り得る情報をお伝えしたく記載しました。
少しでも参考になることがありましたら幸甚です。
文責:大場 健二
【はりきゅうおおば】京都市 中京区 二条駅近く の 鍼灸院
体調不良・病気・怪我を良くしたいとお考えのあなたへ
あなたにとって最善の選択が成され、今のお辛い状況から一日でも早い回復をお祈りいたしております。
参考
- 標準整形外科学 ( 書籍 )
- 医療法人社団 景翠会 金沢病院 歌島大輔医師による「腱板損傷(腱板断裂)のリハビリから手術まで」 https://www.keisuikai.or.jp/patient/cuff_tone-2/
- 日本整形外科学会 「腱板断裂」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html