アトピー性皮膚炎 (Atopic Dermatitis, 一般的には Eczema : 湿疹 ) 

はじめに

できるだけわかりやすくを心がけましたが、難しく、わかりにくい部分もあるかと思います。
しかし、何か糸口を掴んで頂ければ、と思い、詳しく書きました。
ご参考になりましたら幸いです。

(インターネット上の情報も参考にしました。
その中から、できるだけ正確な情報を得るよう気をつけましたが、
確証を得られない部分もありましたので、
当サイトの情報をご利用になる場合は、不確定な部分を含むことにご注意ください。)

概要

アトピー性皮膚炎とは、

皮膚の炎症があり、かゆみや湿疹を繰り返す状態のことです。

湿疹とは、一般的には、皮膚に出ている何かしらの症状を指していうこともありますが、
医学的には、皮膚の炎症(皮膚炎)が引き起こす様々な皮膚の症状のことをいいます。
赤み、かさぶた、小さな水疱、ぶつぶつ、かゆみ、がさがさ、などです。

一般に、乳幼児・小児期(生後~14~17歳頃)に発症し、
年齢を重ねるごとに治る方もおられますが、
成人以降も継続する場合もありますし、成人してから発症することもあります。

平成26年 (2014年) の厚生労働省の統計では、
アトピー性皮膚炎の方は、推計456,000人とされています。

推計を、どのようにしているのかは不明です。

これに基づくと、2014年の日本人口(1億2727万人)の約4%の方、
100人に約4名の方がアトピー性皮膚炎の方となります。

時間と共に良くなって症状が出なくなるような軽症の状態から、
身動きするのも大変でなかなか治らない重症な状態まで、
重症度は様々です。

完治となる方もおられれば、長年治らず治療を継続される方もおられます。

次に、病態理解に関連する内容を掘り下げていきます。

アトピーの語源

日常的に、アトピーというと、アトピー性皮膚炎のことを指していますが、

アトピーという言葉はどんな意味なのでしょう?

アトピー性皮膚炎を理解するのに、言葉の意味とその言葉になった経緯も必要な知識と思いますので、ここに述べてみます。

アトピー atopy、という言葉は、
語源辞典には、
ギリシャ語の 
【atopos (奇妙なこと、異常)】
と、
【atopos】の由来となる、【atopia (場違いな、捉えどころのない)】 
という言葉に由来する【造語】、
と・・に記載されているそうです。

言葉が出てきた経緯としては、

1923年 Arthur Fernandez Coca (免疫学者) と Robert Anderson Cooke (免疫学者・医師) が最初に用いた言葉、と言われています。

先天性過敏症、遺伝や生まれつき過敏症を起こしやすい体質やそれに基づく病気、という内容で、
当時、アレルギーの遺伝の要素 に加え、種々のストレスによって免疫・自律神経・内分泌の異常を生じやすい、
という、「体の状況+心の状況」を表した言葉だそうです。
皮膚炎は含まれておらず、体質のことを指す言葉でした。

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis) という言葉は、

1933年に、Marion Sulzberger が、医学用語として、アトピーと皮膚炎を結びつけて使用したことが最初とされているようです。

しかし、現在、英語圏では一般的に、
アトピー性皮膚炎 (Atopic dermatitis) という言葉をあまり使わず、
湿疹 (eczema) と表現することの方が通常だそうです。
診断名としてアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)は使われていますが、
医師も湿疹 (eczema)を使うことが多いようです。

その理由を調べたことからの私の推測ですが、
世界アレルギー機構 (WAO : World Allergy Organization) では、
アトピー体質における湿疹は、( アトピー性皮膚炎とは呼ばずに、) アトピー性湿疹と呼ぶべき、
という見解があり、それが医療の共通認識として理解されているからなのか、
と思いました。

日本では、1994年に、日本皮膚科学会によって、
「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、掻痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」
と定義され、医療の共通認識として、現在に至ります。

アトピー素因とは、上述のアトピー体質のことですが、
詳細を、日本皮膚科学会のガイドラインから抜粋します。

アトピー素因:
1. 家族歴・既往歴 (気管支喘息,アレルギー 性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるい は複数の疾患)

または

2. IgE 抗体を産生し易い素因

日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/131/13/131_2691/_pdf

とあります。

家族歴とは、ご家族の方が経験されたことがある病気や、お持ちの病気の因子などのことです。
既往歴とは、ご自身がこれまで診断されたり、経験された病気のことです。

IgE ( アイ ジー イー : immunoglobulin E : 免疫グロブリン E の略 )とは、
免疫細胞(リンパ細胞であるB細胞)が作り出すタンパク質で、抗体のことです。

抗体は、身体にとって異物(細菌やウィルス、アレルゲン、その他)である抗原と結びつき、固め、
マクロファージやその他食細胞が貪食(どんしょく: 自分の細胞内に取り込むこと )できる状況にします。
貪食したマクロファージや食細胞は体外に排出されるなどの処理をされます。

抗体ががなければ、免疫の異物排除の反応が起こりません。
数種類(主なものに、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)あり、それぞれ身体の各所に分布しています。

上記アトピー素因の項目を簡潔にまとめると、

1は、
ご家族や、ご自身が、これまでに、
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のうち、
いずれか、あるいは、いくつか、を経験されたことがあるかどうか、
です。

2 は、
なんらかの理由で、IgE が、作られやすい、たくさん作られてしまう、状況にある、ということです。
IgEの量は、血液検査によって調べられます。

次に診断基準ですが、小難しいので、読みにくい方は、ラインマーカーの部分だけをご確認し次へ読み進めてください。

【アトピー性皮膚炎の診断基準】 日本皮膚科学会のガイドラインから引用抜粋

1. 掻痒 (そうよう)

2. 特徴的皮疹と分布

(1)皮疹は湿疹病変
・急性病変:紅斑、浸潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮
・慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮

(2)分布
・左右対側性 好発部位:前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
・参考となる年齢による特徴
   - 乳児期:頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に下降。
   - 幼小児期:頸部、四肢屈曲部の病変。
   - 思春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向。

3. 慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)
乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上を慢性とする。 

上記1、2、および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。

そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断する。

【除外すべき診断】(合併することはある)
接触皮膚炎
脂漏性皮膚炎
単純性痒疹
疥癬
汗疹
魚鱗癬
皮脂欠乏性湿疹
手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)
皮膚リンパ腫
乾癬
免疫不全による疾患
膠原病(SLE、皮膚筋炎)
ネザートン症候群

診断の参考項目
家族歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)
合併症(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎)
毛孔一致性丘疹による鳥肌様皮膚
血清IgE値の上昇

【臨床型(幼小児期以降)】
四肢屈側型
四肢伸側型
小児乾燥型
頭・頸・上胸・背型、痒疹型
全身型
これらが混在する症例も多い

【重要な合併症】
眼症状(白内障、網膜剥離など):とくに顔面の重症例
カポジー水痘様発疹症
伝染性軟属腫
伝染性膿痂疹

日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/131/13/131_2691/_pdf

です。

診断は、これらの条件と、個人の状況を、
医師が診察し、その結果を総合的に判断して行われます。

治療に対する私の考え

お伝えしたかったのは、

診断項目に、アレルギーが必須ではなく、
アレルギー・免疫に関連することは、
診断の参考項目として挙げられているということです。

アトピー性皮膚炎は、アレルギーの影響を受ける人が多数なので、アレルギーの病気だと認識されがちですが、
アレルギー性皮膚炎、という病名でないのは、
病態が単にアレルギーだけが原因ではない、
「奇妙な、とらえどころのない」皮膚炎ということを表しているのです。

根本的な原因はわかっていません。

しかし、アレルギーに関連することが、症状を悪化させることが多いことも事実で、
アレルゲンを特定することが、治療上、重要な場合は多いです。

また、原因に近いところで、
最近の研究では、アトピー性皮膚炎になった方は、皮膚のバリア機能が低下していることが基にあることが解明され、
皮膚バリア機能低下、遺伝的素因、アレルギー刺激、ストレスが、
主に影響する病気だと認識されています。

皮膚バリア機能とは、
皮膚が、
外からの物質や刺激などから身体を守る機能や、
身体の中の水分などが蒸発したり漏れたりするのを防ぎ潤いを保つなどの機能のことです。

遺伝的要素は血縁の方の状況で知ることができます。

アレルギー刺激は、アレルゲンを調べることと、日常で影響していそうなものを調べることで、知ることができます。

ストレスは、ややあいまいですが、身体や心にかかる負担ということで知ることができると思います。

皮膚バリア機能はなぜ低下するのでしょうか。
乾燥したり、
物理的な刺激で皮膚が傷ついたり、
紫外線の刺激に影響されたり、
アレルゲンなどに免疫が過剰反応して炎症が強くなったり、
それ以外にも皮膚に負担がかかることで影響が出ると考えられていますが、
これらの刺激に対し、身体が反応し、もしくは耐えられず、
皮膚バリアを保てない状況になってしまうと考えられます。

また、
素朴な疑問として、
皮膚に刺激を受けたときに、
健常な方とアトピー性皮膚炎の方で、
湿疹が出ない、湿疹が出る、
の違いがあるのはなぜなのでしょうか。

上記の理由では、アトピー性皮膚炎でない方でも起こる可能性はあります。

刺激を受けた時の身体の起こす反応が、なぜアトピー性皮膚炎の方だけ酷くなるのか、という疑問の答えは見つけられませんでした。

私は、皮膚バリアを保とうとしているのは、身体そのもので、
自然治癒という働きが皮膚バリアを保たせているとも言えると考えています。

目線を広くすると、自然治癒が何かしらの影響を受けて、正常に働いていない可能性があると考えられます。

ここに、アトピー性皮膚炎の治療の、重要な要素があるのではないかと私は考えています。

私の鍼灸施術で期待できること

私の施術は、自然治癒という、身体自体の働きがうまくいくようにすることが目的です。

身体のどこかに問題がある場合、身体は異常な信号を出し、自然治癒の働きを正そうとします。

自然治癒が良い方向へ向いて働いてくれることで、
そのバリア機能が通常の働きをしてくれるようになる可能性があります。

ただし、これまでの施術経験と見聞きしたことから、効果の出方には個人差が大きいと認識しています。
病状の強い弱いと効果の間には、ある程度、比例のような関係性はありますが、それだけでは測りきれない印象です。

私自身、皮膚は乾燥することが多く、小さい頃から、夏場になると、
肘の内側や膝の裏側、頚まわりや手足など、かゆみと湿疹がでて、
昔、皮膚科でアトピー性皮膚炎と診断されたことがありました。
数年前には、別の皮膚科では、乾燥による痒みだ、とも言われました。

診断こそ違いますが、どちらにせよ、いわゆる皮膚バリア機能が低下、
もしくは、補いきれない何か、があるのだと思っています。

ですので、自分自身にも施術をしています。

頻度はその時の生活状況によりまちまちですが、
定期的に続けていると、痒みや湿疹はでていても、きつくならないです。

湿疹ができる範囲が少なくなったり、ひどくなりにくかったり、寝ている時に勝手に掻いてしまうことや、痒くて身体や頭ががワーっとなることの頻度が減ったり、などです。

アトピー性皮膚炎の方への施術経験では、
施術をしているその場で赤みが引いて行ったり、
かゆみがおさまりやすくなったり、
皮膚が綺麗になってきたり、
皮膚の状況やや痒みの影響などで硬くなってしまっている身体が和らいで楽になってきたり、
呼吸がしやすくなったり、
その場では変化は見られないが、施術後、しばらくの間は症状が楽であった、
などの効果が見られることがありました。

どのくらいの期間持続するかは、個人差があります。

私自身のことにしてもそうですが、それが治って出てこなくなるという状況ではありません。

しかし、ほとんど気にならなくなる方もおられるようです。

自然治癒が大いに関連していると考えられます。

病院で治療をされる方が多いと思いますが、
私の鍼灸施術を併用されることで、
病院の治療だけよりも調子の良い状態でいられる、
ということは言えます。

目指すところは、治療をしなくても症状が出てこない状態です。

途中経過としては、具合の波があるので、病院での治療をしながらでも、鍼灸施術をしながらでも、きつい症状が出たり、調子が良かったり、を繰り返し、その波の高さが小さくなっていくことを期待して鍼灸施術ををしています。


また、病院の治療で、ステロイド薬を使うかどうか、で悩まれる方もおられると思います。
いろいろな考えがあり、使うのに抵抗を感じる方も少なくないと思います。

私は、ステロイド薬を含め、薬は本当に必要な時に使うのが良いと考えています。
本当に必要な時とは、
つらくて耐えられない、
命に関わる、
継続していないと悪化していってしまう、
などの状況です。

アトピー性皮膚炎では、必要な時というのはどんな状況か、
きついアトピー性皮膚炎の方からお伺いしたことが、私の今の考えに大きく影響しました。

「ある治療だけ、とするより、きついときはステロイド薬を使った方がいい。でないと心が折れちゃう。」

耐え難い場合、心が、気持ちが持たなかったら、一番つらいことと思います。
身体と心が希望を持ってできる方向性を考えてされるのが良いと考えています。

ステロイド薬に関しては、医師の間でも賛否両論という印象を持っています。
薬は、医師の処方に従って使用されるのが良いと思いますが、
ご自身のお考えがある時、お薬の特徴をよく知った上でお考えになるのが良いと思います。

おそらく、ステロイド薬も、症状が出ている間はずっと、と、長期的に処方されることがあると思います。
病状と薬の特徴から、そのような使い方が導き出されて処方されます。
一時的にでは、ぶり返したりするので症状が出なくなるまで継続した方が良い、ということだと思っています。
症状が減っている間に、身体が回復してくれることを期待してのことと思います。

それでは、身体が回復してこなければやめられないのでしょうか、、、。

病院の治療としては継続する方向で処方されることが多いと思います。
なので、薬を使うことで、続けていて身体に影響がないかどうかが心配になる方も多く、
薬に代わる治療を探されるのだと思います。

大変な状況と思います。

ステロイド薬は、急に止めるとリバウンドする場合があると言われています。
長期的にステロイドを使用し、身体がステロイドに依存している状況の場合はなりやすいようです。
が、この副作用やリバウンドも、出る方、出ない方、個人差があるようです。

今、この記事を読んでくださっている方は、アトピー性皮膚炎の治療の経験のある方が多いと思いますので、
薬のことに関して、実感的には、私よりもお詳しいと思います。

長期期間、治療をされておられる方で、お薬の知識や病状のことなどお詳しい方もおられると思いますが、
知識に当てはめることも大切かもしれませんが、
実感を、実体験が最も正直な結果ですので、
知識と実感を合わせてお考えになることが大切なことだと私は思っています。

長期的に使われることも、
必要な時に短期的に使われることも、
人によって、状況によって違いがあるので、一概に良し悪しは言えません。

また、ステロイド以外の薬でも、
副作用が懸念されるものが何種類かあります。

薬の用法用量がきちんと決められているのは、効果と副作用の調節が必要だからです。
薬を処方される主治医とよくご相談してご使用ください。

(最後の項目に治療薬のことについて、ガイドラインに記載されていることをご紹介します。)

薬の効果とリスクの間で、お悩みになられることと思います。
つまるところ、

自分自身にとって何が大切なことなのか。

これが一番大切なことだと私は想っています。

きっちり病院の治療で薬を使って治すんだ!
薬でも、漢方で治すんだ!
病院の治療と、他の良い治療を併用して治すんだ!
できるだけ自然に則した治療で治すんだ!
生活習慣や食事に気をつけ体質改善して治すんだ!
治療はせず自分の身体を信じて治すんだ!
特に治療に対する考えはなく、治ってくれればそれでいいんだ!
この場面だけは何をしても乗り切りたい!



などなど、人それぞれの考えがあると思います。
考えがなければいけないわけではありませんし、悪いわけではありません。

アトピー性皮膚炎の治療で、その時に、どうしたら良くなるのか、と悩むことがあった時に、
ご自分の気持ちや思いが一番大切になると思うのです。

本当に良い治療は何か、と聞かれると、
ご自身のご意向も含まれると考えているため、私は、一概にはお答えできません。

しかし、お伝えできることがあります。

私の鍼灸施術は、
アトピー性皮膚炎の治療に、
身体の土台の治療に、
症状を和らげ、身体が症状を出さないような状況にしていくために、
有効と実感しており、お薦めすることができます。

私の鍼灸施術を受けられる場合、
病院での治療を辞められる必要はありません。

併用されることで、不足部分を補いながら、相乗効果を期待した治療をすることができます。

ご自身のアトピー性皮膚炎の治療に、
鍼灸という選択肢もあるということを知って頂ければ、
治療の検討材料としてお役に立つことができれば、
嬉しく思います。

大場健二

【はりきゅうおおば】京都市 中京区 二条駅近く の 鍼灸院
体調不良・病気・怪我を良くしたいとお考えのあなたへ

付記:治療一般のこと 日本皮膚科学会ガイドラインより

日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021の記載をできるだけ、わかりやすく、と思い、ガイドラインの意図を損なわないように、私の理解を交えて書いています。

治療の最終目標(ゴール)は,

症状がないか,あっても軽微で,日常生活に支障がなく,薬物療法もあまり必要としない状態に到達し,それを維持することである.

また、このレベルに到達しない場合でも,
症状が軽微ないし軽度で,日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とする.

とあります。

治療方法は、

  1. 薬物療法
  2. 皮膚の外用療法・スキンケア
  3. 悪化因子の対策

が挙げられ、多くの病院で基本治療とされています。

また、原因に近いところで、
最近の研究で、アトピー性皮膚炎になった方は、
皮膚のバリア機能が低下していることが基にあることが解明され、
皮膚バリア機能低下、遺伝的素因、アレルギー刺激、ストレスが主に影響する病気だと認識されています。

皮膚バリア機能を正常化し、悪化する要素を極力減らすのが治療方針の要になっています。
・薬物療法は、炎症や痒み他の症状を抑え、繰り返さないように調節し、その間に身体が自然治癒で正常化するのを期待します。
・正常化するのが難しい状況でも、日常生活が差し障りなくできるようになることを期待して行われます。

近年、新たな薬が承認され、以前よりもより効果的に寛解(症状がおさまる状況)させることができる様になってきていると理解しています。

どの薬を使用するかは、あなたの状況を診た主治医の判断で処方されます。
加えて、用法用量や副作用、使用期間などに気をつけないといけないものもありますので、
不安なことやわかりにくいことは、主治医にしっかりご相談・ご確認の上、
その薬をご使用されるかどうかを熟慮頂き、
ご使用される場合は、主治医の指示に従ってご使用ください。

スキンケアは、保湿剤で保湿を補強し、皮膚バリア機能を補充・補強・代償するために保護作用のある油脂性の軟膏を使用することが一般的ですが、ステロイド外用薬と保湿外用薬を混合して使用すると、薬の安定性や吸収が変化する可能性があり、2種類以上の外用薬を安易に処方しない様に、ガイドラインは説明しています。

抗炎症外用薬:炎症を十分に抑えるための塗り薬

ステロイド外用薬

アトピー性皮膚炎の治療の基本とされる薬。
炎症を抑える。
重症度により、処方されるステロイド薬の種類が選択される。
部位により、軟膏、クリーム、ローション、テープ剤、などのタイプが選択される。
長期間使用後に中止する際は、急に止めると症状が悪化したりする場合があるので、
少しずつ減らしていくか、間隔を少しずつ開けていくようにする。

全身性の副作用は、
副腎皮質ホルモン分泌の抑制、高血圧、高脂血症、糖尿病、
満月様顔貌(顔が丸く膨れる)、クッシング症候群などが挙げられるが、
ステロイド外用薬の、規定の処方量で適切に行われれば、起こる可能性は低い。
(全く起こらないわけではないので、これらの症状が見られた場合は、速やかに皮膚科の受診をお勧めします。)

局所的副作用は、
毛細血管拡張,皮膚萎縮,皮膚線条(伸展性皮膚線条,線状皮膚萎縮症),
紫斑,酒皶様皮膚炎・口囲皮膚炎,多毛,色素脱失,創傷治癒遅延,接触皮膚炎,
痤瘡・毛包炎や単純性疱疹,伝染性軟属腫,体部白癬,疥癬など細菌,真菌,
ウイルスによる皮膚感染症、緑内障などがあります。

多くは、ステロイド外用薬を止めるか、適切な処置で回復するが、
皮膚線条(線状のすじができること)(わき、そけい部、陰部に起こりやすい)は元に戻らない、
と言われています。

タクロリムス軟膏

ステロイド外用薬で治療困難であった皮疹に対しても有効性を期待できるとされています。
局所の副作用として、
灼熱感,瘙痒,紅斑等があるが、皮疹の改善に従って軽減、消失することが多い。
皮膚感染症に留意するとされています。

発がんのリスクについて、研究結果や専門家の見解が、ある、なし、分かれるところですので、
処方された際は、主治医にきちんとご確認して頂き、ご自身の納得の上でご使用されることをお勧めします。

デルゴシチニブ軟膏

免疫細胞の活性化を抑制する。
免疫抑制作用を有するため、皮膚感染症部位には使用しない。
使用中は、毛包炎やざ瘡,カポジ水痘様発疹症などの皮膚感染症や、接触皮膚炎に注意する。
発がんのリスクが不明瞭な部分もある様ですが、可能性は拭えないようですので、
処方を受けた際は、主治医への確認をお願いします。

非ステロイド性抗炎症薬 (Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs : NSAIDs)

アトピー性皮膚炎に対して、炎症を抑える作用は、ステロイド外用薬と比べると極めて弱いとされています。
効果があるというエビデンスもない様です。
副作用として、接触性皮膚炎があり、湿疹を悪化させる可能性もあるとのことです。

プロアクティブ療法

薬物療法で、推奨度、エビデンスレベル共に高い治療法に、プロアクティブ療法があります(画像1参照)。
プロアクティブ療法は、湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す状態に対し、
症状がきつい時の治療が済んで症状が良くなっている後、
症状が出ていない状況で、ある程度間隔をあけ、
ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を使用して、
症状が出てこない様にし、かつ、皮膚を正常な状況にしていくための治療法です。

毎日のスキンケアと合わせて行うことが勧められています。

再発する可能性があれば、ずっとしなければいけないのか。
と思われる方もおられると思います。

必ずしもそうではないと思いますが、病状によるところもありますので、
主治医と相談しながら、ご自身の状況を主治医によく診てもらい、
説明してもらいながら進めていく必要があります。

症状が出た時だけ行う治療方法を、リアクティブ療法と言います。

抗ヒスタミン薬

痒みを抑える薬です。
痒くて掻くと、湿疹や皮膚症状が悪化します。
皮膚に触れる物質からのアレルギー反応を抑えることで痒みを抑えます。
炎症を抑える治療と併用されることがあります。
痒みの要素は、アレルギー以外にもあり、個人個人で違いがあるので、必要性のある方に処方される様です。

シクロスポリン

欧米の多くの国で有効性が示されていて、日本でも承認されていますが、
16歳以上で、既存治療で十分な効果の得られない最重症の方のみに使えるとのことです。

最重症とは、強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる状態です。

効果的とされてはいるが、使用量や腎障害、高血圧、感染症などに注意が必要で、
長期間使用の安全性が確立されておらず、
症状が軽快した後は、すみやかに一般的な外用治療に移行することが重要とされています。

ステロイド内服薬

急に悪化した時や、重症・最重症の症状を改善するために用いられます。
ステロイド内服の長期化は、副作用がある為、短期間で行われるべきとされています。

漢方薬

西洋医学と、併用することが有用なこともあると認識されています。
処方は人により異なったり、画一的な処方ではないので、
漢方に習熟した医師に診てもらう方が良いとされています。

バリシチニブ

炎症、免疫反応を抑制する薬です。
既存治療に効果が不十分な方に行われます。
免疫を抑制するため、専門の施設で、副作用やリスクにも対応できる施設でないと処方されないように規制されています。

重要な特定されたリスクは、
帯状疱疹,重篤な感染症(結核,肺炎,ニューモシ スティス肺炎,敗血症,日和見感染症を含む),
消化管 穿孔,B 型肝炎ウイルスの再活性化,間質性肺炎,静 脈血栓塞栓症,好中球数減少,
リンパ球数減少,ヘモ グロビン値減少,肝機能障害 

重要な潜在的リスクは、
横紋筋融解症,ミオパチー,悪性腫瘍,心血管系事象

とあります。

必ず、医師の説明を受けることと、使用されるかどうかのご判断、
使用中の用法用量の厳守、をお願いします。

デュピルマブ

遺伝子組み換えヒトIgG4モノクローナル抗体。
注射のお薬です。
炎症反応が起き始める部分で、炎症が起こらないように阻止するための薬です。
効果が高く、長時間持続し、重大な副作用も少なく、安全性も高い、とされています。
症状を寛解させるだけでなく、寛解を維持させることにも適した薬とされています。
適応となる方の判断が、適切に行われる必要があることと、副作用への対応が可能な施設で行われる治療とされています。

副作用は、結膜炎、投与部位反応。

妊娠中・授乳中

主治医とよくご相談ください。

スキンケア

保湿外用薬

アトピー性皮膚炎では、皮膚バリア機能と保湿因子が低下しています。
それを補う親水性軟膏や吸水性軟膏を用います。
ステロイド外用薬と保湿外用薬の混合など、2種類以上の混合は、効果が変化するため、
安易に行うべきではないとのことです。

入浴・シャワー・洗浄

温度は38℃~40℃が良いとされています。
石鹸・洗浄剤は、余計な刺激を減らすため、添加剤の少ないものが良いようです。

悪化因子の検索と対策

日常的な刺激

汗や唾液をこまめに拭く。
硬い素材のタオルや強い刺激のものは避け、柔らかい低刺激なタオルなどを使う。
シャンプー、リンス、石鹸、化粧落としのクレンジングなどのすすぎ残しや、
過度の使用も刺激になる可能性があるので、洗い方に気をつける。
皮膚に触れる衣類を低刺激のものを選び、髪の毛なども刺激にならないよう調節する。
皮膚を掻いた時の影響を少なくするため、爪を短く切る。
直接皮膚を掻かないように、衣類は長袖・長ズボン・手袋などにする。
など、皮膚への刺激を減らすことが大切です。

接触アレルギー

外用薬、化粧品、香料、金属、石鹸、洗剤、消毒薬など。
接触アレルギーや皮膚症状の悪化が見られる場合は、それらを避ける必要があります。

食物

対策としては、食物アレルギーのあるものは避ける、となりますが、
この方法は、総合的にみると、アトピー性皮膚炎に有効はでない可能性があります。
栄養状況や食物アレルギーの治療なども関連するため、
特に子供の場合、医師と相談のもと行われるのが望ましいです。
まずは外用薬で治療した上で検討する内容、と位置付けられています。

吸入アレルゲン

ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛など、掃除や換気、影響を受けない部屋や場所を確保する、
など環境アレルゲンを減らすことが大切です。

紫外線療法

外用薬による治療で軽快しない、うまく調節できない、薬の副作用が出ている、という方向けの治療です。
効果を得る上で、急性皮膚障害や、合併する感染症の悪化、皮膚がんを含む長期の影響、など、
副作用にも注意が必要となるため、習熟した医師により慎重に行われる必要があると記載されています。
小児に対する安全性に関する情報は不十分、とされています。
治療の際は主治医とよくご相談ください。

最後に

私は医師や専門医ではありませんので、調べた知識と、体験や、施術等の経験から本稿をまとめています。

お薬を使われる時や病院での治療をお受けになる際は、主治医とよくご相談なさって治療に臨んでください。

実際の病院での治療は総合的に判断されて行われますので、理屈では埋まらない差がありますことをご理解ください。

その上で、治療上、悩まれるのではないか、お考えになる場面に遭遇するのではないか、と思える部分を主に記載しています。

少しでも参考になりましたら幸いです。

文責:大場 健二


特有のしんどい感じになる時間が少しでも減り、
良い時間を過ごせる一助となりますようお祈りいたしております。


参考文献、サイト

きゅうとく医院
https://kyutoku.nagoya/q_and_a/pg187.html

田島クリニック
http://www.tajimaclinic.yokohama/category2/entry114.html

やなせ皮フ科クリニック
http://yanase.ddo.jp/posts/post6.html

咲くらクリニック
https://www.sakura-clinic.jp/blog/2019/06/04/3511

Wikipedia アトピー性皮膚炎
https://ja.wikipedia.org/wiki/アトピー性皮膚炎

Wikipedia Arthur F. Coca
https://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_F._Coca

Wikipedia Robert Cooke
https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Cooke_(physician)

語源由来辞典
https://gogen-yurai.jp/atopy/

日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/131/13/131_2691/_pdf


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